【奈良】奈良国立博物館 なら仏像館 ―雨の日の仏像観賞におすすめ
奈良旅行中の雨の日は奈良国立博物館に行くことが多いです。
地下回廊(入場無料)で休憩できるので、観光に疲れたときなどにもおすすめ。
奈良国立博物館を大別すると三つのエリアに分けられます。
①なら仏像館・青銅器館 2016年リニューアル、常設展
②新館 特別展などはここ
③地下回廊 喫茶店・ショップあり(入場無料)
なら仏像館
今回は①のなら仏像館へ。
私は国立博物館のメンバーズパスを持っているので、それを提示して入館しました。
(国立博物館の年間パスポート(2000円)を購入すると、上野・京都・奈良・九州の常設展を一年間何度でも見られます。特別展も少し安くなります。 ※回し者ではありません笑
東京国立博物館 - 東博について 会員制度、寄附・寄贈 国立博物館メンバーズパス(4館共通)
なら仏像館、とても楽しみにしていたのですが、すでに斑鳩を回った後で疲労困憊だったので、わりと朦朧としながら鑑賞することになってしまいました(汗)。
それでもとても印象に残ったのが、伽藍神立像と獅子と破損仏像残欠コレクション。
伽藍神立像
駆け出す姿で「走り大黒」とも呼ばれていたそうですが、最近になって伽藍神(※)だとわかったらしいです。
(※)伽藍神は禅宗や泉涌寺(せんにゅうじ)系律宗の寺院などで造立された守護尊。奈良国立博物館HP参照。
伽藍(寺院の建物)を守る役割ということですから、金剛力士像の役割に近いのかな。
仏像といったら立っているか、座っているか、寝ているか(涅槃像)のどれかだと思うので、疾走する姿が珍しくて印象に残りました。
しかもジョギングレベルでなくて、本当に疾走されているのです。
悪者が伽藍に入ってきたらこの俊足で追いかけるのかしら、などと想像が膨らみます。
獅子
獅子といえば文殊菩薩を乗せている姿をよく見かけます。
なら仏像館では二体の獅子が展示されています。
どちらも「獅子」という名称なので便宜上、ショートヘア君(犬に似ています)とミディアムヘア君と呼ぶことにします。
どちらも愛嬌があってかわいらしいのですが、私はミディアムヘア君が特にお気に入り。
ちょっとくせ毛なのがまたいとおしい。
ミディアムヘア君、かつては背に文殊菩薩を乗せていたのだそうですが、その文殊菩薩は行方がわからないのだそう。
ミディアムヘア君はここで、主人である文殊菩薩の帰りを待っているのだと思うと、哀愁を感じてしまいます。
破損仏像残欠コレクション
これも印象深かったです。
古い仏像を観ていると、手がなくなっていたりしますよね。
そういった、失われたパーツが集められているコーナーがありました。
手、足、頭部など。
一つひとつにこれといった特徴があるわけではないのですが、一か所に集められていると不思議な空間が出来上がっていました。
持ち主がわかればとっくに修復されていると思うので、まだ迷子のパーツたちだと思われます。
獅子もそうですけれど、主人を待っているけなげさみたいなものを勝手に想像してしまいました。
なら仏像館、仏像好きにはたまりません。
もし私が奈良に住んでいたら、週1で通う自信があります。
地下回廊へ
なら仏像館は見応えがありますので、疲れます。
そんなときは地下回廊にある喫茶店『葉風泰夢』のパンケーキでエネルギー補給。
と思ったのですが、16時頃行ったので売り切れてでした(泣)
二年前に食べたことがあるのですが、ものすごくおいしかったです。
ただし、クリームが超たっぷりなので、クリームがダメな人はご注意を。
喫茶店の向かいにあるミュージアムショップも大好きです。
今回は奈良国立博物館の限定柄、シカの手ぬぐいを購入しました。
何種類もあったので、これから買い足していくのが楽しみ。
【奈良】藤ノ木古墳・斑鳩文化財センター ―法隆寺近くにある未盗掘で発見された古墳
奈良の古墳といえば石舞台や高松塚が有名。
少し地味ですが、藤ノ木古墳もあります。
奈良はお寺や仏像がたくさんあって大好きなのですが、そればかりだと単調になってくるので、気分転換に古墳に挑戦してみました。
法隆寺の西大門を出て、西里のまちなみを見学しつつ西へ。
なかなか風情がありますね。
法隆寺の修復等に関わる棟梁の方たちが代々お住まいなんだとか。
どうりで建物が素敵だと思いました。
藤ノ木古墳
少し広い道路に出たら左折。
すると藤ノ木古墳が現れます。
住宅街に突然出現する感じが古都らしくていいですね。
近づいていきます。
古墳の周りをまわってみると、窓のついたドアがあり、中を覗けるようになっています。
人感センサーになっていて、人が近づくと内部のライトが点くと書いてあったのですが、なぜか点きませんでした……。
ドアの窓にへばりついて、必死で内部を覗き見たところ、奥のほうに一応石棺らしきものを確認できました。
付近に設置された説明パネルによると、下の写真の左のような羨道があって、その奥に右のような石棺が置かれているそうです。
特別公開の日は内部まで見学可能らしいです。
もっと詳しく知るために、近くにある斑鳩文化財センターに移動しました。
斑鳩文化財センター
藤ノ木古墳から徒歩で数分です。
古墳好きの友人におすすめされて行ったのですが、こんなにきれいで新しい建物とは!
外に石棺のレプリカも置かれていました。
真っ赤!
ご遺体を収める棺たというのに、なぜこんな派手な色なのだろう、と首を傾げましたが、赤は魔除けの色なのだそうです。なるほど。
神社の鳥居なんかも赤ですからね。
建物の中に入るとすぐ、スタッフの方が声をかけてくださいました。
まずは藤ノ木古墳の説明ビデオを見せてもらうことに。
シアタールーム的なところがとても立派。
20~30人は余裕で座れると思うのですが、他にお客さんはおらず、独占状態でした。
藤ノ木古墳の特徴といえば、「未盗掘」で発見されたこと。
たいていの古墳というものは、盗賊に荒らされ、貴金属類は持ち出されてしまっています。
しかし、藤ノ木古墳は埋葬当時のままだったため、学術的にも大変貴重なのだそう。
ビデオでは発掘に関わった方々が当時の思い出などを語っておられました。
ものすごく楽しそうにお話しされている方がいて、ちょっとうらやましくなりました。こんなに楽しく仕事できたらいいよなあ、と。
全体的な感想としては、知識がない私には少々難しかったかも。
空調もきいているし、暗いし、後半は寝ないように気をつけていました(汗)。
ビデオ上映後はスタッフの方が展示を見ながら説明してくれます。
館内にも石棺のレプリカがあり、発掘当時の状況が再現されていました。
覚えていることをいくつか。
・石棺には二人の男性が葬られていた。
・一人は20~25歳くらい、身長165センチくらい、身分の高い人と思われる。足の骨に脱臼?のあとがあり、足をひきずっていたと推察。骨がけっこう残っていて、DNAもわかる。B型。
・もう一人は25~40歳くらい。上の人に寄り添うような感じで葬られていた。上の人よりは少し身分が低そう。
・刀、靴、髪飾り的なもの、宝飾品などが入れられていた。
・棺を開けたときは泥水が張っている状態。泥水を抜いてから調査した。
他にもいろいろ説明してもらったと思うのですが、忘れてしまったのと、知識不足であやふや。
石棺(レプリカ)を見た後は、各副葬品(こちらもレプリカ。本物は橿原)を見ていきます。
馬具やら鏡やら須恵器・土師器など。
副葬品を眺めていると、いかに豪華なお葬式であったかがよくわかりました。
ここでもいろいろ説明していただいたのですが、歴史用語についてゆけず、半分も理解できているかは怪しい……が、それでも、説明してもらって良かったと思っています。
自分で見学するだけだと「ふうん。へえ」程度で、すぐに忘却の彼方だろうと思うので。
歴史に興味のあるほうではなかったけれど、改めて勉強するのはおもしろいですね。
お手洗いをお借りし、斑鳩の観光案内パンフレットもいただき、スタッフの方に御礼を言って、文化財センターをあとにしました。
ここから法隆寺駅に戻られる方は、斑鳩町役場前からバスに乗るとよいです。
ただし、事前にバスの時刻は要チェックです。
私はタイミングが悪く、バスを30分も待つのが億劫だったので、法隆寺駅まで歩いて戻りました。
法隆寺→中宮寺→藤ノ木古墳→斑鳩文化財センターと回っていたので、ものすごく疲れました(すでに20000歩を超えていました)。
天気がよい日なら、自転車が最も便利だと思います。
【奈良】中宮寺 ―世界三大微笑像の一つ、菩薩半跏像にうっとり
1300年続く尼寺
法隆寺を一通り見学した後は、おとなりの中宮寺へ。
通常拝観料600円ですが、法隆寺の参拝券を見せると500円になりました。
中宮寺の創建は飛鳥時代。
寺運衰退したり、火災があったりして、場所を変えたりしながらも1300年続く尼寺です。
現在の本堂は昭和43年落慶の、比較的新しい建物。
本堂を囲むようにヤマブキが咲き誇っていました。
良い意味で浮世離れしているというか、幻想的というか、夢の中というか、不思議な居心地でした。
個人的にかなり好きです。
お堂を囲む池にはカメもいます。
菩薩半跏像(如意輪観世音菩薩)〔国宝〕
靴を脱いで階段を数段上がると畳の間。
正面には菩薩半跏像(如意輪観世音菩薩)が!
う、美しい!
少し距離はあるのですが、つややかに黒光りするお姿から、美しさが存分に伝わってきます。
穏やかな表情にうっとり。
安心を感じさせてくれますね。
どうしたら人々を救えるのだろうか、と悩まれているのだそうです。
国際美術史学者間では、この像のお顔の優しさを数少ない「古典的微笑(アルカイックスマイル)」の典型として高く評価し、エジプトのスフィンクス、レオナルド・ダ・ヴィンチ作のモナリザと並んで「世界の三つの微笑像」とも呼ばれております。
(中宮寺パンフレットより引用)
三大〇〇ってポジティブなものもネガティブなものもいろいろありますが、三大微笑像の一つって、とても素敵です。
もっと広めてもいいのではないかと。
天寿国曼荼羅繍帳〔国宝〕もある
平たく言えば、布に刺繍を施したもの、です。
音声テープの解説によると、聖徳太子の奥さんが太子の死を嘆き、太子が往生している天寿国の様子を宮中の采女たちに刺繍させたのだそうです。
本堂内の左手にレプリカが飾られていました。
本物は糸がかなり劣化しているので、奈良国立博物館で管理してもらっているのだそう。
おすすめです
法隆寺を回って結構疲れていたし、中宮寺は別の機会でもいいかな、と一瞬思ったのですが、行って良かったです!
このあとは藤ノ木古墳へ。
【奈良】法隆寺③夢殿 ー救世観音のほほえみに癒される
大宝蔵院を見学した後は東院伽藍に向かいます。
東大門をくぐってさらに東へ。
四脚門が見えてきました。
四脚門の奥に夢殿があります。
肝心の夢殿の写真を撮り忘れました……(何やってるんだ私)。
パンフレットより画像お借りします。
ついでに法隆寺iセンターにあった夢殿模型の写真もどうぞ。
夢殿の周囲を回りながら、中をのぞく見学スタイル(法隆寺は大講堂以外全てこのスタイルでした)。
網が張られているのと、内部が暗いのでもどかしいですが、厳重な管理のためには仕方ないですね。
さて、夢殿といったら「救世観音立像」でしょうか。
ガイドブックや仏像の本にも必ず載っているかと思われます。
私が買ったガイドブックには救世観音のお顔がアップにされていたので、お顔の大きい仏像という印象を勝手に持っていましたが、実際に見ると、顔はむしろ小さめだったと記憶しています(思い込みってこわい)。
全身としても、わりとほっそりされていました。
何よりもやっぱり、微笑みが素敵でした。
写真がないので、ガイドブックの写真をもとに描いた絵を。
夢殿には他に、聖観音、考養像(太子16歳の姿)、行信僧、道詮律師などもいらっしゃいました。
次は中宮寺へ。
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【奈良】法隆寺②大宝蔵院 ー悪夢を良夢に変えてくれる夢違観音と、1300年以上流浪した百済観音
西院伽藍を出て、聖霊院から東へ進み、
東室と妻室の前を通って
綱封蔵の手前を北に進んで大宝蔵院へ。
大宝蔵院
受付にて参拝券を提示して内部へ。
お堂はひんやりしていて少し冷えたので、大宝蔵院の適温が心地よい。
ホッとします。
金堂落慶之図
最初に出迎えてくれるのは絵画。
前田英作さんの『金堂落慶之図』大正時代の作品です。
かなり大きいです。
法隆寺の金堂が完成したときの様子を想像して描かれたのだと思いますが、う、上手い……(当然だけど)。
表情が生き生きとしていて、絵の中の人が今にも動き出しそう。
夢違観音
いろんな観音像を観てきましたが、夢違観音とな?
初めて聞くそのお名前にクエスチョンマークが立ち上る。
調べたところ、悪い夢を見たときに、良い夢に変えてくれる観音様だそうです。
法隆寺の大宝蔵殿に安置されている観音菩薩立像。国宝。銅製鍍金で像高 87.3cm。頭部の三面宝冠と台座は別鋳で本体は一鋳になり,内部は空洞。像名の「夢違」は,江戸時代に書かれた『古今一陽集』に,「悪い夢を見たとき,この観音像に祈るとよい夢に変えてくれる」とあることに由来し,一般に親しまれている。白鳳時代の代表作の一つ。なお台座は江戸時代の後補。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目辞典の解説より
こんなお姿です。
悪夢を見た方はぜひ夢違観音様にお願いしてみてください。
百済観音像
すごくほっそりとされています。
八頭身だそうです。
展示パネルに記載されていた説明によると、この百済観音像はいろんなところを転々としていて、定住する場所がなかったのだそう。
平成十年に法隆寺に百済観音堂ができて、やっと安住の地を得られたのだとか。
飛鳥時代の仏像ですから、1300年以上の間、流浪していたわけですね。
そのエピソードに納得してしまうほど穏やかなお顔でした。
「いいよいいよ、あなた先にどうぞ」
と譲ってばかりで、ついつい自分のことは後回しにしてしまいそうな印象。
その他、玉虫厨子やら百万塔やら、見応えあり。
近隣に住んでいたらしょっちゅう来るのになーと、なんだか悔しいような気持ちで大宝蔵院をあとにしました。
次は東院伽藍にある夢殿へ。
【奈良】法隆寺①西院伽藍 ー聖徳太子のために造られた釈迦三尊ほか
法隆寺へ
柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺 (子規)
でおなじみの法隆寺へ行ってきました。
JR奈良駅から電車に乗って11分、JR法隆寺駅に到着。
こんな感じの大通りを北に向かって歩いていきます。
(駅からバスも出ています)
法隆寺東の交差点を左折すると法隆寺iセンターが見えてきました。
入口では斑鳩のゆるキャラ?パゴちゃんが迎えてくれます。
何故にみかん?と思いましたが、こうして冷静に写真を見るとおそらく彼は柿ですね。
柿くへば、の柿ですね。なるほど。
聖徳太子の看板も。
一人だったので、顔をはめて写真を撮れず残念。
法隆寺iセンターでは自転車を借りることもできるそうです。
私が訪れた日は、お昼前から雨予報だったので借りなかったのですが、斑鳩をまわるなら自転車が便利です(少し歩いてみて実感)。
比較的道も広く、東大寺春日大社近辺のように観光客がうじゃうじゃしているわけでないので、普段あまり自転車に乗らないという方にも優しめのコースなのでは、と思います(もちろん安全には十分注意してください)。
法隆寺iセンターの二階では、西岡常一さん(宮大工棟梁)の展示をやっていました。
建物好きとしては気になったのですが、雨が降りそうだったので、先を急ぎます。
参道を北に向かって歩く。
南大門が見えてきました。
こちらは1438年に再建されたものだそうです。
南大門をくぐると……中央に見えるのは中門でしょうか。残念ながら工事中でした。
参拝券(1500円)を購入し、西院伽藍へ。
中門工事中のため、五重塔側の入口から入りました。
五重塔
我が国最古の五重塔です。
重厚感ありますね。
最下層の内陣は入口からのぞきこむような形で見学できます。
東面:維摩居士と文殊菩薩が問答している場面
北面:釈尊入滅の場面
西面:釈尊の遺骨を分離する場面
南面:弥勒菩薩の説法場面
が塑像によって表現されています(パンフレットより)。
予習せずに訪れたので、いろいろ見逃してしまいました…。
釈迦入滅の様子だけは、涅槃像でわかりましたが。
大講堂
西院伽藍の北側には大講堂があります。
こちらには薬師三尊(薬師如来、日光菩薩、月光菩薩)と四天王がおられます。
990年にお堂が再建された際に、この薬師三尊と四天王も作られたそうです。
薬師三尊は全員座っているスタイルで、薬師如来は薬壺をお持ちでした。
撮影禁止ですので仏像の写真は法隆寺の公式HPをご覧ください。
金堂
中門工事中のため、五重塔から見学しましたが、本来は中門をくぐると正面にこの金堂が迎えてくれます。
(こちらから参拝するのがスタンダードのようです)
ガイドブックなどでもおなじみの、金銅釈迦三尊像を本尊としています。
私の記憶が確かならば、以下のような配置だったかと。
(地蔵菩薩ともう一体吉祥天がいらしたかもしれません。記憶が曖昧になってしまっているので、目安としてお考えください)
釈迦三尊像:聖徳太子のために
薬師如来:太子の父の用明天皇のために
阿弥陀三尊:太子の母の穴穂部間人皇后のために
造られたのだそうです(パンフレットより)。
四天王は楠で作られた我が国最古のもの。
四天王といったら甲冑を着た武将スタイルが思い浮かびますが、こちらの四天王は少々貴族っぽい雰囲気をまとっておられました。
踏みつけている邪鬼も存在感ありました。
天井から吊るされた天蓋、壁画(再現)も見応えがあります。
一つひとつじっくり観ていたら時間があっとういう間に経過してしまいます。
以上、法隆寺の西院伽藍でした。
次は大宝蔵院に向かいます。
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【京都】東寺③ 観智院 -獅子・象・馬・孔雀・迦楼羅に乗った五大虚空蔵菩薩像
観智院
東寺の北大門を出て観智院へ向かいます。
観智院は真言宗の勧学院。平たく言うと、お坊さんが勉強したり、あるいは住居のような役割のところかと思います。
広い玄関のようなところで靴を脱いで上がり、順路に従って見学していきます(内部は撮影禁止)。
庭が綺麗だなーとか、やけに古いふすまがあるなーとか、ぼんやりしたまま見学してしまったのですが、客殿は国宝なのだそうです。
客殿の床の間には宮本武蔵直筆の「鷲の図」があります。
絵柄がはっきり認識できないほど古びていたように思います。
五重塔やら金堂講堂やら宝物館で情報を入れてすでにお腹いっぱいで、正直かなりぼんやりしており、順路が曖昧になるという事態(汗)
少しウロウロした後、こっちかなー(まぁ、何か見逃していてもいいか)と玄関側に戻ろうとしていたら後ろから「スイマセン」と声が。
振り向けば北欧系?の外国人女性が。
その女性、私が向かおうとしている方向とは別の方向を指さし、「観マスカ?」と片言の日本語で微笑みました(慈悲にあふれたような、とても美しい微笑みでした)。
それ以上の言葉はなかったのですが、おや、なんだか向こう側にいいものがあるらしい、と伝わってきたので、外国人女性に御礼を言ってそちらに行ってみました。
すると、五大虚空蔵菩薩像が!!!
五大虚空蔵菩薩像
虚空蔵とは無尽蔵、広大無辺の知恵を無尽に蔵していることをいう。我国には求問持法(この菩薩を念じて記憶力を得る法)の虚空蔵として伝えられ、空海も一説にこの法を観操より受け、真言密教を開く足がかりとしている。五大虚空蔵菩薩は、その知恵を五つ表したもので、息災増益の祈願のための本尊となっている。
(観智院パンフレットより引用)
す、すごい。
私はこんな大物を見逃しそうになっていたのか!
声をかけてくれた外国人女性に激しく感謝しました。
大きなリュックを背負っていたし、首にカメラをかけていたような気がするので、観光客の方と思われるのですが、わざわざ日本人の私に教えてくれるなんて!
(というか、自国の観光スポットで迷うなよ、私)
目の前の仏像の美しさと、外国人女性の優しさで、なんだか胸がいっぱいでした。
さて、この五大虚空蔵菩薩像、唐の都、長安の青龍寺金堂の本像だったもので、唐に行った僧の恵運さんが持ち帰ったものだそうです(847年)。
そんなに古いもの、しかも唐から渡ってきたものだなんて。
積み上がってきた時間やら、当時の渡航の大変さを思うと、ただただ「すごいなー」と思わずにはいられません。
五大虚空蔵菩薩はそれぞれ獅子、象、馬、孔雀、迦楼羅(かるら)に乗っています。
獅子と象はよく見かけますし(文殊菩薩、普賢菩薩)、孔雀も見たことがあります(孔雀明王)が、馬、迦楼羅は珍しいような。
五大虚空蔵菩薩像のお顔、誰かに似ているなーと思って、これまで知り合ってきた人々の顔を思い浮かべていました。
「ああ、あのひと!」とわかって勝手にスッキリしたり。
愛染明王像
五大虚空菩薩像の隣の部屋(仕切りはありませんが)には、愛染明王さんがいました。
明王といったら怒りの形相(憤怒相)が定番。
こちらの愛染明王も怒りの表情ではあるのですが、目がぱっちりしていて、なんとなくかわいらしい印象を受けました。
頭上に乗った獅子の表情もたまらないです。
観智院、観ても観なくてもいいや、と思っていましたが、おすすめです。
東寺に行かれた際にはぜひ。
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