【東京】醍醐寺展 ー聖宝坐像(醍醐寺を開いたお坊さんの彫像)とアイコンタクト・目玉むきだしの五大明王像に励まされる
サントリー美術館(東京ミッドタウンガレリア3階)にて開催中(2018年9/19~11/11)の「京都・醍醐寺 真言密教の宇宙」展、観てきました。
仏像の感想がメインです。
入口は以下のような感じで、わりとオープンな雰囲気。
この写真だとかなりすいているように見えますが、開催初期にしては意外と混んでいるな、というのが正直な感想でした。とはいえ、ストレスになるほどではなく、快適に観賞できました。
京都・醍醐寺について
醍醐寺について、パンフレットにある説明書きをまとめると
・874年 聖宝(しょうほう、空海の弟子)によって開かれた
・真言宗醍醐派の総本山
・真言密教のうちでも加持祈祷や修法(すほう:儀式のこと)などを重視する寺
とのこと。
空海さんが日本に持ち帰った真言密教。
その教えは奥が深いので、図画を用いて説明していた→仏像や仏画が重視されたそう。
だから、(空海さんの直系弟子の聖宝さんが開いた)醍醐寺にはたくさんの仏像仏画文書が伝わっている、というわけですね。
観賞した仏像
如意輪観音坐像
会場に入ってすぐに迎えてくれるのが「如意輪観音坐像」。
パンフレットやポスターを飾っている方です。
如意輪観音といったら、頬杖をついて考えているお姿が特徴的。
思索のテーマは「どうしたら人々を救えるか」。
像高はあまり高くなく、ガラスのケース内にいらっしゃいました。
前後左右、どの方向からも拝見できます。
暗い会場内で照明の光を浴びる姿は神秘的でした。
聖宝坐像
次に見たのは、醍醐寺を開いたお坊さん、聖宝さんの像。
高僧(偉いお坊さん)の像って、意外とよく見かけますよね。
十大弟子なんかは有名ですし。
ただ、他の仏像(観音像とか)に比べるとやはり地味なので、これまでは「ふーん」という感じで観ていました。
しかし、この聖宝さんの像は、すごく良かったです。
というか、今回の醍醐寺展の展示で、個人的には一番印象が強かったかも。
まず、表情が柔和で親しみやすい。
眉毛が下がっていて癒し系ですが、目は芯のある感じ。
正面に立って聖宝さんと目線を合わせると、今にも喋り出すのではないか、と思うほど、顔が生きているような感じがするのです。
作者は吉野右京種久さんという江戸時代の仏師。
江戸時代ということは、聖宝さんはとっくに亡くなっていますから、肖像画とか文書を参考に造られたのだろうと思います。
それでこんなに生きているような感じを出せるのはすごいなー、と思ったのでした。
ぜひ、正面に立って、目を合わせてみてください。
写真は公式HPでご覧になれます。
展覧会の構成|京都・醍醐寺展 真言密教の宇宙 公式サイト|2018年9月19日(水)〜11月11日(日)サントリー美術館|2019年1月29日(火)|3月24日(日)
虚空蔵菩薩立像
まず、虚空蔵菩薩とは?
日本には、奈良時代の8世紀に伝えられ、虚空蔵菩薩を念じて記憶力を得るという「求問持法」の本尊として信仰を集めました。
仏像の見方ハンドブック p.60
簡単に言うなら「求問持法の本尊」でしょうか。
虚空のようなものすごい知恵と慈悲をお持ちなのだそう。
たしか、空海さんもこの「求問持法」によって神秘体験をしたのだとか。
醍醐寺に伝わる虚空蔵菩薩立像は、なんと国宝。
像高はおそらく50センチ程度と小ぶりです。
指先が少し欠損してしまっていましたが、全体的にとてもきれい(1000年以上経過しているように思えない)でした。
ずっと聖観音だと思われてきたのだそうですが、近年の調査で虚空蔵菩薩だと判明したらしいです。
(参考)
この虚空菩薩を五つに開いて五体セットで祀っているのが「五大虚空蔵菩薩」らしいです。
たとえば東寺の観智院に安置されているものなどが該当するでしょうか。
帝釈天騎象像と閻魔天騎牛像
帝釈天騎象像はその名の通り、帝釈天が象に乗っています。
けっこう大きくて迫力がありますし、象もいい味出してました。
一方で、「閻魔天騎牛像」とな?
仏像はけっこう観てきたつもりだけど、聞いたことがない。
というわけで、少し調べてみました。
閻魔と聞くと、地獄でおなじみの閻魔大王(閻魔様)をまず思い浮かべますよね。
この閻魔大王、もともとは各方位を守護する「十二天」の一尊の閻魔天だったようです。
閻魔天が中国の道教と結びつき、後に閻魔大王となったらしいです。
真言密教での閻魔天は閻魔天供という修法(除病・息災・延寿・産生を祈願する大がかりな儀式)の本尊という位置づけらしいです(wikipedia参照)。
閻魔天は通常、曼荼羅に描かれている(つまりは仏画)のですが、醍醐寺展では立体の仏像が観られます。閻魔天の彫像としては唯一のもののようです(醍醐寺展説明パネルより)!
五大明王像
密教といえば五大明王は外せません。
明王は、普通の教えでは救えない人々(悪人)を救うために、厳しくて怖い姿をしています。
悪い事をしたら厳しく、しかし愛をもって怒ってくれる先生、みたいな感じでしょうか。
中央に不動明王、向かって右手に降三世明王、右端に金剛夜叉明王、向かって左手に軍荼利明王、左端が大威徳明王という配置になっていました。
特徴的だったのは、みなさん目玉が飛び出ているところ。
明王といえば、目をカッと見開いているのが定番ではありますが、こちらの五大明王は目を見開くどころか、目玉を飛び出させていました。
すごい迫力です。
異形ではあるのですが、なんとなく励まされるような気がしてくるから不思議。
五大明王について
(参考文献:仏像の見方ハンドブック)。
・金剛夜叉明王は金剛杵(こんごうしょ)という密教の法具を持っているのですが、この金剛杵で様々な悪を打ち砕くんだそうです。
・軍荼利(ぐんだり)とはサンスクリット語で「とぐろを巻くもの」の意。
手首などに蛇を巻きつけているのがよく見えました。
「なんで蛇?」と思ったのですが、「とぐろを巻くもの」からきているのですね。
さまざまな障害を取り除いてくれるそうです。
・大威徳明王は水牛にまたがっています。
顔も六面、手は六本、脚も六本!
悪を降伏する仏ですが、戦勝祈願の本尊ともされるようです。
・降三世明王についてはこちらの記事内で簡単にまとめています。
快慶作の不動明王坐像
先述した五大明王の不動明王とは別に、快慶作の不動明王も観ることができました。
くっと斜めの方を睨んでいる不動明王です。
(運慶もそうですが)快慶の作品はやはり目が素晴らしいですね。
虹彩の部分の赤が美しい。瞳孔(黒目)とのバランスも絶妙です。
もちろん目だけでなく、全体的に丁寧というか、何一つ文句のつけようがないのですが。
薬師如来坐像
展示室の階段を下り始めると、薬師如来および両脇侍象の姿が視界に入ります。
薬師如来を見ながら階段を下りるなんて、非日常的でよかったです(※薬師如来に見とれて階段をふみ外さないように気をつけましょう)。
薬師如来は、台座を含めると3メートル超。
肩も胸もがっしりしています。
背景のロールカーテンの緑色と薬師如来・両脇侍象の体色がマッチしていて、おしゃれな空間に仕上がっていました。
お寺のお堂で拝観するのは雰囲気があっていいですが、美術館ではまた違った雰囲気が楽しめていいですよね。
グッズ
まだHPにグッズがアップされていない(9/20時点)ようなので、簡単に書いておきます。正式な商品名や値段などは後日公式HPにてご確認ください。
仏像観賞用の測量野帳
測量野帳は、表紙がやけに堅いメモ帳です(屋外などで使いやすい)。
ますます用途が広がる測量野帳|商品情報|コクヨ ステーショナリー
こちらのメモ帳の仏像バージョンがありました(といっても、表紙に仏像大使のお二人の似顔絵?が印刷されているだけで、中身は普通の測量野帳です)。
不動明王が映し出されるLEDライト
ボタンを押してライトを壁などに向けると、不動明王が映し出されるもの。
人気なのか、はたまた鋭意生産中なのか、売り場にはあと二つしかありませんでした。
スマホケース
一番欲しいなと思ったのはスマホケース。手帳みたいに開くタイプのもの。
如意輪観音像がプリントされていて、ネイビー×ベージュ?(記憶が少々曖昧なので、あくまでご参考程度とお考えください)の色合いもかわいかったです。たしか2300円。
私は荷物を少なくしたい派の人間で、手帳タイプのスマホケースは使用しないので、後ろ髪を引かれつつも諦めましたが…。
その他
定番のクリアファイル、チケットファイル、ポストカードなどもありました。
五大明王のシルエットがプリントされたTシャツとか、仏像がプリントされたトートバッグ、紅茶などもかわいかったです。
おわりに
仏像メインで感想をまとめましたが、他の展示物も興味深かったです。
仏画や書物も多いですし、俵屋宗達の屏風なんかもありました。
全体的に、多すぎず、少なすぎず、ちょうどよいサイズ感の美術展だと思いました。
仕事帰りなどにふらっと立ち寄るのにもいいと思います。
個人的に一番良かったのはやはり聖宝坐像でしょうか。
とはいえ、さすがにマニアックだと思うので、人に「見て!」とおすすめするなら五大明王像か薬師如来かなと思います。