【上野】快慶・定慶のみほとけ② - 元は人食い鬼、筋肉ムキムキの「羅刹(らせつ)」が憎めない
快慶・定慶のみほとけ①の記事では
・行快作の釈迦如来坐像
・快慶作の十大弟子
について感想を書きました。
本記事は、上記以外の仏像の感想です。
購入したグッズも紹介します。
仏像の感想
千手観音立像
会場に入って最初に出迎えてくれたのが千手観音。
造られたのは大報恩寺の創建よりも古いようなのですが、いつ頃安置されたかは不明だそうです(作者も不明)。
手は42本、十一面でした。
翻波式衣文(ほんぱしきえもん)が特徴的。
なお、翻波式衣文とは
平安時代前期の木彫で衣文 (衣の皺) を,丸い波と角の波を交互に彫ってさざなみが立ったように表現する方法。奈良時代末期の木彫にもみられるが,平安時代前期に多用された。
(ブリタニカ国際大百科事典 小項目辞典の解説より)
簡単にまとめると、丸い波と角の波を交互に彫って衣のひだを表現している、ということですね。
翻波式衣文についてよく知らなかったので、確認しそびれました…。再訪できたら観てみよう。
傅大士(ふだいし)坐像および二童子(にどうじ)立像
こちらは大報恩寺近くにあった北野経王堂(きたのきょうおうどう、現在は廃絶)から伝わった彫像。
作者は院隆さんという仏師で、室町時代のものです。
写真はトーハクのHPに記載のものをご覧ください。
東京国立博物館 - 展示 日本の考古・特別展(平成館) 特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」
傅大士さんという方は輪蔵(中心に柱が立っていて、回転する構造物。一周まわすと、お経を一回唱えたことになる)を初めて作った人。
両脇の童子は傅大士さんの子ども(普成・普建)。
この二童子の表情がいい。
ニカッと(ニコッとではなく、ニカッと)笑っていて、見ているとなんだか元気がでてきました。
普建のほうは保存状態が良く、着物の柄も結構はっきり見えました。
誕生釈迦仏立像
片手を天に、もう片手を地に向けるポーズをしています。
鋳造の原型を作ったのが行快さんである可能性が高いそうです。
小さいせいでしょうか、行快さんの作風が出ているかというと、あまりよくわからなかった、というのが正直なところです(見る目が養われていないだけかも)。
写真は公式ツイッターに掲載されています。
おかめちゃん@快慶・定慶展【公式】 (@kaikeijokei2018) | Twitter
天王および羅刹立像
まず、羅刹(らせつ)とは?
もとは、人を食らう悪い鬼。
のちに仏教に入り、仏の守護神となったそうです(十二天のうちの羅刹天)。
この羅刹なるものが、天王とともに五軀、ガラスケース内に展示されていました。
一体一体は、両手の平に乗るくらいの小さめサイズです。
説明パネルによれば、「説法の聴衆として集まった天部や六道の夜叉として造られたものかもしれない」とのこと。
作者は不明ですが、慶派仏師の作品である可能性が高いそうです
さて、羅刹の外見ですが、鬼というよりは「モンスター」。
五軀いるうち、「羅刹その三」がおすすめ。
「その三」のお顔は、豚とバッファローを足して二で割ったような感じで、愛嬌があります。
また羅刹は、大力で俊足ということなので、ムキムキ・ムチムチの足をしています。
ふんどしスタイルでお尻も丸見えですが、筋肉がすごい。
まるで取組中のお相撲さんのお尻。
お相撲さんよりもさらに引き締まっているかも。
この筋肉足&尻で追いかけられたらたまったものではありません。
心を入れ替えてくれてよかった。
六観音
六観音は
①聖観音:観音の基本
②千手観音:無限の慈悲者
③馬頭観音:諸悪粉砕怒りの観音
④十一面観音:11の顔をもつ救済者
⑤准低観音:子を授けてくれる
⑥如意輪観音:願いをかなえる仏
の総称。
(⑤の准低観音のかわりに不空羂索観音が入ることもあります。)
(青字は『仏像の見方ハンドブック』より引用)
六観音は六道(地獄道、餓鬼道…)から人々を救う仏です。
平安時代以降に大流行したのだとか。
こちらの六観音は定慶(肥後定慶)さんの作品。
准低観音の像内に定慶さん自筆の銘があるそうです。
ここで定慶さんのことを少々。
定慶さんは、運慶さんの弟子です。
運慶さんの弟子には湛慶さんがいますが、湛慶さんは運慶さんの実の息子。
その湛慶さんより10歳ほど若い弟子が定慶さん。
(運慶さん次男の康運さんが定慶に改名したという説もあるらしいです。ウィキペディアより)
相当な力量があったそうです。
作風にはやはり運慶さんの影響があるとのこと。
ちなみに、定慶という名の仏師は鎌倉時代前期には四人もいたのだとか(展示パネルより)。
区別するために、この六観音をつくった定慶さんは、肥後定慶などと呼ばれたりしています。
聖観音の写真
六観音のうち、聖観音のみ、撮影OKでした(フラッシュはNG)。
他の五軀も同じフロアにありますが、撮影できませんのでご注意ください。
奥の壁に映る光背の模様が美しいですね。
ちなみにこの光背、会期後半には取り外され、観音像の後姿を観られるそうです。
私にしては上手に撮れてしまった、と一瞬うぬぼれたのですが、照明がいい塩梅で当たっているので、シャッターさえ押せばこんな感じになります(一般的なデジカメ使用です)。
聖観音の二の腕の質感、リアルですね。
つるつるで、少しふっくらしています。
衣のたなびき方も繊細。
六観音のうち、馬頭観音以外は顔がよく似ていました(馬頭観音だけ憤怒相なので)。
とりわけ准低観音と如意輪観音の顔はそっくりだったような。
とても神秘的な空間でした。
グッズ
開催初期でしたので、ゆっくり見て回れました。
大報恩寺はおかめ発祥の地といわれているそうで、おかめグッズが充実していました。
てぬぐいは白地にミントグリーンとピンクのおかめさんがプリントされていて、かわいかったです。
おかめさん柄のペンタイプの塗香も興味深い。
定番のクリアファイルも、写真が素敵なのでやっぱり欲しくなってしまいます。
あと、京都の豆菓子が充実していましたね。
パッケージがあまりにもかわいくて、それだけで買ってしまいそうでした。
しかし、私はもう、購入するものを心に決めていたのです。
プレスリリースされたときから決めていたのです。
フェリシモさんとのコラボグッズ、十大弟子の徳目ピアス(イヤリングもあります)です。
キャッチコピーは「耳元に十の教え」。
十大弟子の徳目(得意分野)にちなんでデザインされたアクセサリー。
とはいっても、写真からお分かりのように、奇抜でもなく、使いやすいデザインです。
一応、梵字(?)的な文字が小さく彫られています。
十種類あるので迷ったのですが、舎利弗さんの「智恵第一」ピアスにしました。
舎利弗さんにあやかって頭脳明晰に!というよりは(もちろん頭脳明晰に越したことはないですが)、知恵ジェム(ジェムは宝石の意)なるパーツが、どことなく栗っぽくてかわいかったのでこれに決めました。
取り外し可能な「未敷蓮華パーツ」もついています。
このパーツにはこんな願いが込められているそう。
未敷蓮華とは、まだ咲かない蕾のままの蓮花のこと。仏教では如来まで至っていない観音さまが持つことが多いアイテムです。これは仏の心をもっているが、まだ開花していない人の心を表しているとも。 自分が目指したい徳目を選んで耳につけていただくとき、どうぞこの「未敷蓮華パーツ」も一緒に付けていただき、心に蓮の花が咲くことを目指していただければ幸いです。
(フェリシモおてらぶブログより引用)
心に蓮の花が咲くことを目指そう、というわけ。
動くたびに揺れる未敷蓮華に触れれば、気持ちが引き締まりそうです。
おわりに
二記事にわたって快慶・定慶展の感想を記しました。
今回の展示で個人的に良かった仏像は
1位 快慶作 十大弟子より 目楗連(もくけんれん)&富楼那(ふるな)
2位 行快作 釈迦如来坐像
3位 羅刹その三
ですかねー(選ぶのが難しい)。
展示にまつわる記憶を辿ったり、自分で撮影した聖観音の写真を見ていたら、また行きたくなってきました。