【奈良】法隆寺②大宝蔵院 ー悪夢を良夢に変えてくれる夢違観音と、1300年以上流浪した百済観音
西院伽藍を出て、聖霊院から東へ進み、
東室と妻室の前を通って
綱封蔵の手前を北に進んで大宝蔵院へ。
大宝蔵院
受付にて参拝券を提示して内部へ。
お堂はひんやりしていて少し冷えたので、大宝蔵院の適温が心地よい。
ホッとします。
金堂落慶之図
最初に出迎えてくれるのは絵画。
前田英作さんの『金堂落慶之図』大正時代の作品です。
かなり大きいです。
法隆寺の金堂が完成したときの様子を想像して描かれたのだと思いますが、う、上手い……(当然だけど)。
表情が生き生きとしていて、絵の中の人が今にも動き出しそう。
夢違観音
いろんな観音像を観てきましたが、夢違観音とな?
初めて聞くそのお名前にクエスチョンマークが立ち上る。
調べたところ、悪い夢を見たときに、良い夢に変えてくれる観音様だそうです。
法隆寺の大宝蔵殿に安置されている観音菩薩立像。国宝。銅製鍍金で像高 87.3cm。頭部の三面宝冠と台座は別鋳で本体は一鋳になり,内部は空洞。像名の「夢違」は,江戸時代に書かれた『古今一陽集』に,「悪い夢を見たとき,この観音像に祈るとよい夢に変えてくれる」とあることに由来し,一般に親しまれている。白鳳時代の代表作の一つ。なお台座は江戸時代の後補。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目辞典の解説より
こんなお姿です。
悪夢を見た方はぜひ夢違観音様にお願いしてみてください。
百済観音像
すごくほっそりとされています。
八頭身だそうです。
展示パネルに記載されていた説明によると、この百済観音像はいろんなところを転々としていて、定住する場所がなかったのだそう。
平成十年に法隆寺に百済観音堂ができて、やっと安住の地を得られたのだとか。
飛鳥時代の仏像ですから、1300年以上の間、流浪していたわけですね。
そのエピソードに納得してしまうほど穏やかなお顔でした。
「いいよいいよ、あなた先にどうぞ」
と譲ってばかりで、ついつい自分のことは後回しにしてしまいそうな印象。
その他、玉虫厨子やら百万塔やら、見応えあり。
近隣に住んでいたらしょっちゅう来るのになーと、なんだか悔しいような気持ちで大宝蔵院をあとにしました。
次は東院伽藍にある夢殿へ。
【奈良】法隆寺①西院伽藍 ー聖徳太子のために造られた釈迦三尊ほか
法隆寺へ
柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺 (子規)
でおなじみの法隆寺へ行ってきました。
JR奈良駅から電車に乗って11分、JR法隆寺駅に到着。
こんな感じの大通りを北に向かって歩いていきます。
(駅からバスも出ています)
法隆寺東の交差点を左折すると法隆寺iセンターが見えてきました。
入口では斑鳩のゆるキャラ?パゴちゃんが迎えてくれます。
何故にみかん?と思いましたが、こうして冷静に写真を見るとおそらく彼は柿ですね。
柿くへば、の柿ですね。なるほど。
聖徳太子の看板も。
一人だったので、顔をはめて写真を撮れず残念。
法隆寺iセンターでは自転車を借りることもできるそうです。
私が訪れた日は、お昼前から雨予報だったので借りなかったのですが、斑鳩をまわるなら自転車が便利です(少し歩いてみて実感)。
比較的道も広く、東大寺春日大社近辺のように観光客がうじゃうじゃしているわけでないので、普段あまり自転車に乗らないという方にも優しめのコースなのでは、と思います(もちろん安全には十分注意してください)。
法隆寺iセンターの二階では、西岡常一さん(宮大工棟梁)の展示をやっていました。
建物好きとしては気になったのですが、雨が降りそうだったので、先を急ぎます。
参道を北に向かって歩く。
南大門が見えてきました。
こちらは1438年に再建されたものだそうです。
南大門をくぐると……中央に見えるのは中門でしょうか。残念ながら工事中でした。
参拝券(1500円)を購入し、西院伽藍へ。
中門工事中のため、五重塔側の入口から入りました。
五重塔
我が国最古の五重塔です。
重厚感ありますね。
最下層の内陣は入口からのぞきこむような形で見学できます。
東面:維摩居士と文殊菩薩が問答している場面
北面:釈尊入滅の場面
西面:釈尊の遺骨を分離する場面
南面:弥勒菩薩の説法場面
が塑像によって表現されています(パンフレットより)。
予習せずに訪れたので、いろいろ見逃してしまいました…。
釈迦入滅の様子だけは、涅槃像でわかりましたが。
大講堂
西院伽藍の北側には大講堂があります。
こちらには薬師三尊(薬師如来、日光菩薩、月光菩薩)と四天王がおられます。
990年にお堂が再建された際に、この薬師三尊と四天王も作られたそうです。
薬師三尊は全員座っているスタイルで、薬師如来は薬壺をお持ちでした。
撮影禁止ですので仏像の写真は法隆寺の公式HPをご覧ください。
金堂
中門工事中のため、五重塔から見学しましたが、本来は中門をくぐると正面にこの金堂が迎えてくれます。
(こちらから参拝するのがスタンダードのようです)
ガイドブックなどでもおなじみの、金銅釈迦三尊像を本尊としています。
私の記憶が確かならば、以下のような配置だったかと。
(地蔵菩薩ともう一体吉祥天がいらしたかもしれません。記憶が曖昧になってしまっているので、目安としてお考えください)
釈迦三尊像:聖徳太子のために
薬師如来:太子の父の用明天皇のために
阿弥陀三尊:太子の母の穴穂部間人皇后のために
造られたのだそうです(パンフレットより)。
四天王は楠で作られた我が国最古のもの。
四天王といったら甲冑を着た武将スタイルが思い浮かびますが、こちらの四天王は少々貴族っぽい雰囲気をまとっておられました。
踏みつけている邪鬼も存在感ありました。
天井から吊るされた天蓋、壁画(再現)も見応えがあります。
一つひとつじっくり観ていたら時間があっとういう間に経過してしまいます。
以上、法隆寺の西院伽藍でした。
次は大宝蔵院に向かいます。
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【京都】東寺③ 観智院 -獅子・象・馬・孔雀・迦楼羅に乗った五大虚空蔵菩薩像
観智院
東寺の北大門を出て観智院へ向かいます。
観智院は真言宗の勧学院。平たく言うと、お坊さんが勉強したり、あるいは住居のような役割のところかと思います。
広い玄関のようなところで靴を脱いで上がり、順路に従って見学していきます(内部は撮影禁止)。
庭が綺麗だなーとか、やけに古いふすまがあるなーとか、ぼんやりしたまま見学してしまったのですが、客殿は国宝なのだそうです。
客殿の床の間には宮本武蔵直筆の「鷲の図」があります。
絵柄がはっきり認識できないほど古びていたように思います。
五重塔やら金堂講堂やら宝物館で情報を入れてすでにお腹いっぱいで、正直かなりぼんやりしており、順路が曖昧になるという事態(汗)
少しウロウロした後、こっちかなー(まぁ、何か見逃していてもいいか)と玄関側に戻ろうとしていたら後ろから「スイマセン」と声が。
振り向けば北欧系?の外国人女性が。
その女性、私が向かおうとしている方向とは別の方向を指さし、「観マスカ?」と片言の日本語で微笑みました(慈悲にあふれたような、とても美しい微笑みでした)。
それ以上の言葉はなかったのですが、おや、なんだか向こう側にいいものがあるらしい、と伝わってきたので、外国人女性に御礼を言ってそちらに行ってみました。
すると、五大虚空蔵菩薩像が!!!
五大虚空蔵菩薩像
虚空蔵とは無尽蔵、広大無辺の知恵を無尽に蔵していることをいう。我国には求問持法(この菩薩を念じて記憶力を得る法)の虚空蔵として伝えられ、空海も一説にこの法を観操より受け、真言密教を開く足がかりとしている。五大虚空蔵菩薩は、その知恵を五つ表したもので、息災増益の祈願のための本尊となっている。
(観智院パンフレットより引用)
す、すごい。
私はこんな大物を見逃しそうになっていたのか!
声をかけてくれた外国人女性に激しく感謝しました。
大きなリュックを背負っていたし、首にカメラをかけていたような気がするので、観光客の方と思われるのですが、わざわざ日本人の私に教えてくれるなんて!
(というか、自国の観光スポットで迷うなよ、私)
目の前の仏像の美しさと、外国人女性の優しさで、なんだか胸がいっぱいでした。
さて、この五大虚空蔵菩薩像、唐の都、長安の青龍寺金堂の本像だったもので、唐に行った僧の恵運さんが持ち帰ったものだそうです(847年)。
そんなに古いもの、しかも唐から渡ってきたものだなんて。
積み上がってきた時間やら、当時の渡航の大変さを思うと、ただただ「すごいなー」と思わずにはいられません。
五大虚空蔵菩薩はそれぞれ獅子、象、馬、孔雀、迦楼羅(かるら)に乗っています。
獅子と象はよく見かけますし(文殊菩薩、普賢菩薩)、孔雀も見たことがあります(孔雀明王)が、馬、迦楼羅は珍しいような。
五大虚空蔵菩薩像のお顔、誰かに似ているなーと思って、これまで知り合ってきた人々の顔を思い浮かべていました。
「ああ、あのひと!」とわかって勝手にスッキリしたり。
愛染明王像
五大虚空菩薩像の隣の部屋(仕切りはありませんが)には、愛染明王さんがいました。
明王といったら怒りの形相(憤怒相)が定番。
こちらの愛染明王も怒りの表情ではあるのですが、目がぱっちりしていて、なんとなくかわいらしい印象を受けました。
頭上に乗った獅子の表情もたまらないです。
観智院、観ても観なくてもいいや、と思っていましたが、おすすめです。
東寺に行かれた際にはぜひ。
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【京都】東寺②宝物館 ー火災から復活した千手観音立像
五重塔、金堂、講堂を観た後は宝物館へ。
宝物館入口を入って左手が売店、右手に行くと一階展示室、階段を上がると二階展示室・二階ホールという構造になっています。
最も有名なのは千手観音立像でしょうか。
千手観音立像は、平安時代中期頃の作品。
像高584.6 cm!
国宝・重要文化財の千手観音像では国内最大だそうです。
(奈良の唐招提寺の千手観音も大きかったよな?と思って調べたら、536 cmでした。東寺の方が50cm程度大きいですね)
現在、手は126本ですが、もともとは1000本あったんだとか(1930年の食堂火災によって焼損)。
火災前(大正時代)の写真はこちら。
足元まで細い手がびっしり伸びています。
現在のお姿。
腰から足元にかけての手が火災によって失われてしまいました。
火災の後、直す方法がなくてそのままだったらしいのですが、戦後合成樹脂ができて、五十年前に修理されたそうです。
火災のときに同じく焼けてしまった四天王はまだ修復されておらず、東寺食堂の隅に置かれていました。
本当に焦げた木というか、巨大な炭、という感じでした。
形がなんとなく残っているものもあるのですが、イメージはバーベキューのときに使う炭(ただし巨大)のようで痛々しかった。
修復を待つばかりです。
四天王に比べると、千手観音は比較的焼損が少なかったのかもしれませんが、火事のあとがわからないレベルに修復されています。
興味深いのは、その修理の事前調査の際、千手観音の右大脇手から桧扇が出てきたこと。
桧扇には「元慶元年(877)」とあったそうです。
昭和の修理で発見されるまで1,100年くらいの間、ずっと右脇手に入っていたわけです。
火事のときも右手に守られていたわけで。
タイムカプセルなんてもんじゃないですね。
その桧扇も二階展示室に展示されていました。
今回、予備知識なしで訪れたので、「ふーん」と流しながら観てしまったのが悔やまれます。
こんな背景があると知っていたら、違う見方ができたかもしれない。
記憶をたどりながら、「ああ、あれはこういうことだったのか!」と理解していくのも楽しいのですけどね。
このあと観智院に向かいました。
感想はこちら。
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【京都】東寺① 五重塔・金堂・講堂 -薬師三尊・21体の仏像が織り成す立体曼荼羅
京都駅からぶらぶら歩いて数分(途中、イオンモールKYOTOに寄ったりしつつ)
見えてきました、東寺。
慶賀門をくぐると左手に五重塔が見えます。
四月中旬、新緑が美しい。
宝蔵のまわりにある池には鴨がいました。
池の底の餌をついばんでいるようですが、ドナルドダックのようなおしりがかわいい。
春季特別公開中ということで、金堂、講堂、宝物館、観智院を観られる共通券(1000円)を購入。
五重塔
残念ながら、内部は見られませんでした(2018年は4/27~5/25は公開しているそうです)。なので、ぐるりと一周するだけ。
真下から見上げるのも良いですが、少し遠くから見る形が美しいですね。
余談ですが、五重塔の近くで職員の方が草刈り(刃が高速回転する機械を使用)をしていたのですが、刈った草がこちらに飛んでこないよう、網でガードする方も配備されていました。
さすが世界遺産、気遣いが細やかです。
さて、いよいよ仏像たちに会いに行きます。
金堂
うっかりしていて外観の写真を撮り忘れました。
現在のお堂は1603年に竣工されたものだそう。
お堂の中に入ると、暗くてひんやりしています。
金堂中央には薬師如来、その両脇に日光菩薩と月光菩薩、薬師如来の台座部分に十二神将がいます。
内部は撮影禁止ですので、パンフレットを撮影したものがこちら。
薬師如来の右手は施無畏印(手のひらをこちらに向ける感じ)となっています(薬師如来のスタンダード)。
この施無畏印、見る角度によってはオッケーサインに見えるのですね。
薬師如来の斜め前、つまり、月光菩薩の前に立ち、そこから薬師如来を見上げてみると、施無畏印がオッケーサインに見え(中指がゆるく曲げられているので)、イイネ!的でなんとなく嬉しい。
日光菩薩の表情もどこか人間らしくて良かったです。
もしも悩みを相談したら「ふふふ、そうでしょう、わかるわ」と言ってくれそう(あくまで個人的妄想)。
そして、日光菩薩、月光菩薩の足元をよーく見ると、邪鬼を踏んでいました(蓮の台座の下)。
邪鬼といえば四天王などに踏まれているのをよく見かけますが、菩薩にまで踏まれているとは!
邪鬼の憎めない表情が好きです。
講堂
続いて講堂へ。
立体曼荼羅が有名。
曼荼羅といったら掛け軸的と言いましょうか、たくさんの仏が二次元的に描かれているのがスタンダードだと思いますが、東寺の講堂には仏画でなくて、立体曼荼羅があります。仏像を配置することによって表現しているのです。
講堂に入ると、全二十一体の仏像が迎えてくれます。
二十一体も集まると、迫力がありますね。
ひんやりとしていることもあり、講堂に入った瞬間、良い意味でゾクゾクしました。
講堂の中央が如来部(五智如来)、右が明王部(五大明王)、左が菩薩部となっており、それぞれ五体の仏像たちが並んでいます。それらを囲むように四天王と梵天・帝釈天。
金堂と同様に、講堂内部は暗いので、後ろのほうにいる広目天や多聞天は見づらいのが少し残念です。
保存のため、強い光を当てたりはできないのでしょうけど。
東寺のパンフレットの表紙を飾っている梵天さんが特に人気のようでした。
仏像好きとしては内部が暗いのがもどかしかったです。
でも、あの暗くてひんやりしたお堂という場で仏像を観るのもまた良いんですよね。
逆に、博物館だと明るい中じっくり見られる良さもあるし。
次は東寺の宝物館へ。
【上野】仁和寺展② ー葛井寺の千手観音
トーハクこと東京国立博物館にて開催中の仁和寺展に再び行ってきました。
会期終了が近づき(3月11日まで)、2月末頃から混雑し始めた様子だったので、二回目の鑑賞はあきらめかけていました(入場までに一時間とか……待てない派です。この性質のせいで20分待ちのミュシャ展を諦め、チケット代をパアにしたことがあります。今にして思えば20分待ちなんて別に大したことなかったのに……)。
ツイッターをチェックしてみると、天候のせいもあるでしょうか、たまたま待ち時間ゼロだった日があり、急遽出かけました。
展示物が結構入れ替わっていた
今回のお目当ては2月14日より公開となった葛井寺の千手観音。
最低限、葛井寺の千手観音だけ観られれば、と思って会場入りしたのですが、会期後半から新たにお出ましになった展示物もけっこうあって、意外と新鮮でした。
仏画などは同じテーマでも別の作者が書いたものに変更されていたり。
印象に残っているのはこちら。
円勢・長円作の薬師如来坐像(国宝)です。
像高12センチメートル、手のひらサイズ。
小さいけれど、大変見応えがありました。
なんといっても彫刻が非常に細かい!もちろん巧いし丁寧。
これは確かに国の宝だ…と思いました。
どうしたらこんな細かい仕事ができるのか摩訶不思議です。
やっぱり、写真で見るのと実物を前にするのでは得られる情報が全然違うものです。
混雑していて、じっくり観るわけにはいかなかったのが少し心残り。
また観たいな、と思ったのですが、秘仏なのですね。
そう簡単にはお会いできないかも。
葛井寺の千手観音
けっこう大きくて迫力があります(像高は97.9センチメートルだそうですが、幅があるので大きく見えた)。
大手・小手合わせて1041本!
千手観音像は、40本の手で千手をあらわすのが一般的だが、本像は大手・小手合わせて1041本をもち、合掌した手を中心に、千の手が広がる本像の表現は見事である。千本以上の手をもつ千手観音像は、本像しか確認されていない。
(パンフレットより引用)
手たちは一本一本が美しかった。
手のひらを開いているものもあれば、指を少し曲げているものも。
全て同じ手だと違和感があるのかもしれませんが、一本一本にそれぞれ表情があるため、手が1041本もあるという不自然な状況でありながら、実に自然でした。
手たちは背中側から前に向かってぐわっと伸びているような感じです。
写真では平面的な印象を受けていたので意外でした。
葛井寺では毎月18日と8月9日のみ開帳だそうですが、厨子の中にいらっしゃるので、細部まではよく見えないのだそうです。
本展示では後ろ側までバッチリ見ることができました。
本場で見るのも風情があっていいし、こうして博物館で見るのも新たな発見があっていいですね。
おわりに
他の仏像たちは会期前半と変更なしなので、拝見するのは二回目ですが、結構忘れていたりしたので、楽しかったです。
待ち時間なしとはいえ、会期終了間際なので混雑していました(展示に気をとられて立ち止まっていると隣の方にぶつかってしまうレベル)。
やっぱりこういう特別展などは終了間際じゃなくて、早めに行くのがよろしいかと。
効率もいいし、ゆったり見られるので。
気になったものはお早めに。
【上野】仁和寺展① 博物館の中に観音堂が出現
東京国立博物館にて開催中の特別展
「仁和寺と御室派のみほとけ -天平と真言密教の名宝-」
みどころ① 空海さんゆかりの三十帖冊子
空海さんが唐で書写して持ち帰った経典・儀軌類。
・唐の書生さんが写した箇所
・空海さんが写した箇所
・たちばなのはやなりさん(三筆の一人だそうです)が写したと思われる箇所
がそれぞれ展示されていました。
会場は全体的に空いていましたが(一月下旬来訪時)、空海さんの写した箇所の前だけやや混雑していました。
横長のメモ帳(A5のノートを横向きにして開いたような)といった感じで、意外と小さい。
古文書を読めない私が思うことは一つ。
「全員、字がうまい」
空海さん、たちばなのはやなりさんは書の達人ですから当然として、唐の名もなき書生(?)の方も字が上手い。完璧な書道のお手本のようでした。
空海さんの字は良い意味で独特な感じを受けます。
一文字がそれ自体で完成されているというか、芸術を感じるというか。
が、それ以上何か述べられるほどの知識もなく(一応習字を7年習ってはいましたが)、「ほお、これが空海さんの字かぁ。なんか芸術的」と千二百年前に思いを馳せるにとどめるのでした。
少し話が逸れますが、空海さんの肖像(絵)を見るとなぜか和んでしまいます。
あごががっしりしていて、なんとなく四角いフォルムの頭。
歴史上の偉人でありながら、友達のだれかに似ていそうな親近感です。
悩み事を相談したい感じ。
みどころ②ー観音堂再現がすごすぎる
第四章では仁和寺の観音堂が再現されているのですが、これがもう、素晴らしい。
全33体の仏像たちがずらりと並んでおられます。
しかもここだけ撮影OKという太っ腹ぶり(※フラッシュはNGです)。
一体一体、じっくり観ていたらあっという間に何時間も経ってしまう、そんな空間となっていました。
ここも比較的混雑していますので長時間は立ち止まりづらいかもしれません。
じっくり観たい派の方はオペラグラス等で後方から見るのがおすすめかも。
この時点でだいぶ満足しているのですが、観音堂の内陣の壁画も見応えがあります。
本尊である千手観音に合わせ、観音菩薩の様々な姿やその救いの有り様を描いているのだそう(展示パネルより)。
みどころ③ー秘仏もたくさん
いやはや、観音堂、すごかった、と余韻に浸る間もなく、この後貴重な仏像たちが次々と登場します。
以降は撮影禁止なので、自分のノートから(写真はパンフレットを切り抜いたものです)。
降三世明王立像
明通寺の降三世明王(ごうざんぜんみょうおう)立像は2メートル5センチ、かなり大きくて見応えがありました。
過去、現在、未来の三世と、貪(むさぼり)、じん(怒り)、痴(無知)の三毒(煩悩)を降伏する(抑え鎮める)仏
参考文献:石井亜矢子『仏像の見方ハンドブック』p74,75
なのだそうです。
足元には……邪鬼ではなくて、ヒト? と思いきや、神だそうです。
左足で大自在天(シヴァ神)、右足で烏摩(シヴァ神の妃)を踏んでいる。起源の神を踏むことでさらに強力な仏であることを示している。
参考文献:石井亜矢子『仏像の見方ハンドブック』p74,75
如意輪観音菩薩坐像
如意輪観音菩薩坐像(にょいりんかんのうぼさつざぞう)は兵庫の神呪寺からいらしてました。5月18日のみに開扉される秘仏(!)だそうです。
年一回の開扉という秘仏なのに、こんなにまじまじと拝見してよいものか、と湧き上がる謎の遠慮。
願いをかなえてくれる仏です。
けだるそうな表情(と表現していいのかわかりませんが)が素敵。
他に印象に残った仏像としては
龍華時の菩薩坐像:お顔が綺麗
屋島寺の千手観音:手が今にも動き出しそう
こちらはパンフレットにも載っていないので、写真なしですが。
まだまだ挙げればキリがないのですが、とにかく、満足感とともに展示室を出たのでした。
参考:展示物の概要
ざっくりまとめると
前半部分(第一~三章):書、肖像画、古文書など
後半部分(第四、五章):仏像
という感じです。
第一章 仁和寺に伝わる天皇直筆の書、歴代の肖像画、古文書など
第二章 修法の場で用いられる仏具や法具
第三章 仁和寺および御室派関係寺院に伝わる絵画・書跡・工芸品
第四章 仁和寺観音堂(再現)
第五章 御室派寺院の仏像
会期後半戦の目玉
2月14日~は葛井寺の千手観音が登場するとのこと!
ずっと見てみたかったので、私ももう一度行くつもりです。
www.tnm.jp